MINISFORUM MS-S1 MAXは、Ryzen AI Max+ 395と最大128GBのメモリを搭載したAI向けミニワークステーションです。ローカルLLM用として気になるのは、128GBをどこまで生かせるのか、最大126 TOPSをどう見ればいいのか、そして約66万円を払う意味が自分の用途にあるのかでしょう。
2026年9月18日時点のMINISFORUM・AMD公式情報と、MINISFORUMが公開しているローカルLLMの実測結果から、性能・拡張性・価格の3点を整理します。MS-S1 MAX以外も含めて選びたい場合は、MINISFORUMのミニPC全体の選び方も確認できます。
MINISFORUM MS-S1 MAXはローカルLLMにどこまで使える?

MS-S1 MAXはRyzen AI Max+ 395、Radeon 8060S、最大128GBのLPDDR5x-8000メモリを搭載しています。ただ、「128GB」「最大126 TOPS」というスペックだけでは、ローカルLLMの実用性までは分かりません。MINISFORUMが公開している実測結果もあわせて見る必要があります。
128GBメモリは大規模なローカルLLMで生きる
MINISFORUMが2026年2月27日に公開した公式検証では、128GB LPDDR5x UMAメモリを搭載したMS-S1 MAXで、UMAフレームバッファを96GBに設定しています。
128GBすべてを固定VRAMとして使うわけではありません。公式検証ではBIOSから96GBを設定し、Radeon 8060Sを利用してローカルLLMを動かしています。
128GB構成が生きるのは、こうした大容量の共有ビデオメモリを必要とするモデルを扱う場合です。単に「メモリが多いから高性能」と見るのではなく、自分が使うモデルに大容量メモリが必要なのかで判断します。MINISFORUM製品でローカルLLMを動かすための構成を広く比較したい場合は、MINISFORUMでローカルLLMを使う場合の選び方も参考になります。
公式実測ではモデルの規模だけで実用時の速度は決まらない
96GBのグラフィックメモリを設定したMS-S1 MAXについて、MINISFORUMは複数のローカルLLMで実測値を公開しています。
| モデル | 公式実測の出力速度 |
|---|---|
| DeepSeek-R1-Distill-Qwen-7B-GGUF | 42.33 tok/s |
| Qwen3-VL-30B-A3B | 43 tok/s |
| Llama 3.1 70B | 4.8 tok/s |
| cogito-v2-preview-Llama-109B-MoE-GGUF | 14.18 tok/s |
| gpt-oss-120b-GGUF | 32.56 tok/s |
| Qwen3-235B-A22B-Instruct-2507-GGUF-Q2 | 10.81 tok/s |
70BのLlama 3.1が4.8 tok/sなのに対し、120Bのgpt-ossは32.56 tok/sです。パラメータ数が増えれば、そのぶん必ず遅くなるわけではありません。
MINISFORUMも、ドライバーのバージョン、量子化精度、モデルのアーキテクチャによって速度が変わるとしています。「128GBなら○Bまで快適」とモデルサイズだけで線を引かず、使いたいモデルの実測値まで見るのが確実です。
大容量メモリによってモデルを読み込めても、求める生成速度が出るとは限りません。「動かせるか」と「必要な速度が出るか」は別の判断になります。
最大126 TOPSのうちNPU性能は最大50 TOPS
「最大126 TOPS」はNPU単体の性能ではありません。AMDのRyzen AI Max+ 395公式仕様では、Overall TOPSとNPU TOPSを分けて記載しています。
| AI性能の表記 | Ryzen AI Max+ 395 |
|---|---|
| Overall TOPS | 最大126 TOPS |
| NPU TOPS | 最大50 TOPS |
MINISFORUMのローカルLLM検証では、LM StudioでVulkanを利用するなど、Radeon 8060Sを使った推論環境も試されています。126 TOPSという数字から、特定のLLMが何tok/sで動くのかを直接判断することはできません。
MS-S1 MAXの拡張性はどこまで使える?

約66万円という価格には、PCIe拡張やデュアル10GbEといったワークステーション向けの機能も含まれます。ローカルLLMだけでなく、これらを使うかどうかも購入判断に関わります。
PCIe x16スロットはPCIe 4.0 x4接続
MINISFORUMのMS-S1 MAX公式仕様には、フルレングスのPCIe x16拡張スロットが記載されています。ただし、電気的な接続はPCIe 4.0 x4です。
「PCIe x16」はスロットの物理形状であり、x16の帯域で接続されているわけではありません。グラフィックカードやAI推論アクセラレータを追加するなら、PCIe 4.0 x4接続で目的を満たせるかを製品側の仕様と照らし合わせます。
M.2 2280スロットも2基とも同じではなく、1基がPCIe 4.0 x4、もう1基がPCIe 4.0 x1です。各スロット最大8TB、合計最大16TBで、RAID 0/1に対応しています。
OCuLinkは標準搭載ではなくPCIeからの拡張が必要
MS-S1 MAXの公式I/O仕様にOCuLink端子はありません。
MINISFORUMにはPCIeスロットをOCuLinkへ変換する「EOP4A PCIe to OCuLinkカード」がありますが、今回調べた公式情報では、EOP4Aの対応機種としてMS-S1 MAXを明記した記述は見つかりませんでした。
したがって、MS-S1 MAXを「OCuLink搭載モデル」として扱うのは誤りです。OCuLinkを使う前提なら、変換に必要な機器だけでなくMS-S1 MAXとの対応状況も調べてから構成を決めます。MINISFORUMで外付けGPUを使う方法や接続方式そのものを比較する場合は、MINISFORUMのeGPU接続についてまとめた記事で確認できます。
デュアル10GbEは複数台のAI環境にも利用できる
MS-S1 MAXはRealtek RTL8127による10GbE LANを2ポート搭載しています。MINISFORUMは、このMS-S1 MAXを2台使ったクラスターで235B Q4モデルをローカル実行する実環境テストも公開しています。2Uラックへの展開にも対応しています。
単体で使うだけなら、デュアル10GbEを生かす場面は限られます。複数台のMS-S1 MAXを使ったAI環境や10GbE対応機器との接続まで考えている場合は、価格に含まれる機能として意味を持ちます。
MS-S1 MAXの約66万円は自分の用途に必要?

MS-S1 MAXの128GB RAM+2TB SSD構成は、2026年9月18日の調査時点で659,999円(税込)です。この価格が自分に見合うかは、128GBメモリに加えてPCIe拡張やデュアル10GbEまで使うかで変わります。
同等CPU・128GB・2TB構成の国内販売例とは約11万円の差がある
価格を比べるため、Ryzen AI Max+ 395、128GBメモリ、2TB SSD、Windows 11 Proという基本条件をそろえて調査した結果が次の表です。
| 比較項目 | MS-S1 MAX | MINIX ER939-AIの国内販売例 |
|---|---|---|
| CPU | Ryzen AI Max+ 395 | Ryzen AI Max+ 395 |
| メモリ | 128GB | 128GB |
| SSD | 2TB | 2TB |
| OS | Windows 11 Pro | Windows 11 Pro |
| 確認価格 | 659,999円(税込) | 549,800円 |
| 価格差 | 110,199円 | |
差額は110,199円です。ただし、ER939-AIの549,800円は前工程で確認できた国内販売例であり、2026年9月18日の調査ではメーカー公式の日本販売価格として再確認できませんでした。現在購入できる2製品のリアルタイム価格差ではありません。
MINIXのER939-AI公式製品ページでは、Ryzen AI Max+ 395、128GB、2TB SSD、Radeon 8060S、Windows 11 Proという基本構成を確認できます。ただ、MS-S1 MAXとはI/Oや拡張性まで同じ製品ではありません。110,199円という差額は、MS-S1 MAX固有の機能まで必要かを考えるための比較材料です。
大容量LLMと拡張機能をどこまで使うかで購入を判断する
約66万円を払う意味があるかは、使う機能と照らし合わせると判断しやすくなります。
| 想定する用途 | MS-S1 MAXで使う機能 | 購入判断の見方 |
|---|---|---|
| 大容量メモリを必要とするローカルLLMを扱う | 128GBメモリ・最大96GBの共有ビデオメモリ | 128GB構成を生かせる用途 |
| PCIe機器を追加して構成を拡張する | PCIe x16スロット(PCIe 4.0 x4接続) | MS-S1 MAXの拡張性を利用できる |
| 複数台のAI環境や10GbE対応機器を使う | デュアル10GbE | ネットワーク機能を生かせる用途 |
| 小規模なローカルLLMが中心で、PCIe拡張やデュアル10GbEを使わない | 128GBメモリや拡張機能を使い切らない | 約66万円を払って必要な機能かを再検討する |
大容量LLMだけでなく、PCIe拡張やデュアル10GbEまで必要になるほど、MS-S1 MAX固有の構成を生かせます。一方、小規模なローカルLLMが中心なら、128GBやワークステーション向けの拡張機能まで必要なのかが価格を判断する分かれ目です。
購入時は現在の販売価格を確認してください。
まとめ
MS-S1 MAXの128GB構成では、公式検証で96GBの共有ビデオメモリを設定し、109Bや120B、235B Q2などのローカルLLMを動かしています。ただし、モデルサイズだけでは実用速度を判断できません。最大126 TOPSもNPU単体の数値ではなく、NPU性能は最大50 TOPSです。
拡張面では、PCIe x16スロットがPCIe 4.0 x4接続で、OCuLinkは標準搭載されていません。デュアル10GbEやPCIe拡張まで利用するかどうかで、MS-S1 MAXの約66万円という価格の意味も変わります。
購入判断の軸は明確です。128GBの大容量メモリが必要なローカルLLMを扱うのか、ワークステーション向けの拡張機能まで使うのか。この2点を自分の用途と照らし合わせれば、MS-S1 MAXが必要か判断できます。

